長いフライトだった。
空港の自動ドアの向こう
生暖かい空気と華やかな香り
初めて訪れる国で踏み出す一歩は
まだ足の裏と重力が均衡に釣り合わず
身も心も宙に浮いているようだ
自動ドアの向こうの久々の外の空気は
出発前に着ていたダウンコートを
ただの荷物に変えた
その代わり両手には産声をあげて間もない
小さな命を抱えた
子供が産まれてからのこの世は
いなかった時のこの世と比べ
全く違う世界に到着した
そんな心境だった
病院で過ごした1週間
それは本当に長い
長いフライトの様だった
次々と新しい命が産まれ
修行を終えた新米の母が
卒業していく
狭い空間で起こっている
異様な出来事
最初に見た花びらの舞う空が
真っ青でとても綺麗だった